完全希薄化後時価総額
完全希薄化後時価総額とは?
完全希薄化後時価総額(Fully Diluted Market CapまたはFD Cap)とは、発行済みの供給量と将来発行される可能性のあるトークンをすべて含めて、仮にすべてのコインやトークンが流通した場合の暗号資産の総市場価値を計算する指標です。
完全希薄化後時価総額を計算するには、現在のトークン価格に最大トークン供給量を掛けます。これは、すべてのトークンが現在の価格で取引可能であると仮定したシナリオを表しています。完全希薄化後時価総額は、現在流通しているトークンのみを考慮する現在の時価総額とは大きく異なる場合があります。
完全希薄化後時価総額は、プロジェクトチームが保有するトークンや、準備金として確保されているトークン、権利確定期間の対象となるトークンが存在するICOやトークン発行において特に重要です。これは、トークンの総供給量と配布計画を考慮してプロジェクトの潜在的価値を評価する際に役立ちます。
完全希薄化後時価総額は、将来の希薄化のダイナミクスについての洞察を提供します。これにより、トークンの発行が全体的な市場評価に与える潜在的な影響を理解することができます。現在の時価総額と比較して完全希薄化後時価総額が高い場合、市場に参入する予定の相当数のトークンが存在することを示しており、これは将来の需給動向やトークン価格に影響を与える可能性があります。
計算例:ABCコイン
例として、架空の暗号資産ABCコインを考えてみましょう。現在、1000万ABCコインが流通しており、1コインあたりの価格は10ドルです。ただし、このプロジェクトは将来のトークンセールを通じて追加で500万トークンを発行する計画があります。
ABCコインの完全希薄化後時価総額を計算するには、既存の流通供給量の価値に、将来発行される可能性のある追加トークンの価値を加算します。この場合:
完全希薄化後時価総額 = (総供給量 + 追加トークン) × トークン単価
= (1000万 + 500万) × 10ドル
= 1500万 × 10ドル
= 1億5000万ドル
したがって、既存の供給量と潜在的な追加トークンを考慮すると、ABCコインの完全希薄化後時価総額は1億5000万ドルとなります。
完全希薄化後時価総額の解釈における注意点
完全希薄化後時価総額の解釈には慎重なアプローチが必要です。すべてのトークンが流通した場合の総市場価値の推定値を提供しますが、完全希薄化後時価総額に含まれるすべてのトークンが実際に発行されたり、自由に取引されたりするわけではありません。一部のトークンは制限の対象となったり、プロジェクトチームによって保有されたり、そもそも発行されない可能性もあります。そのため、完全希薄化後時価総額は、確定的な評価額というよりも、仮説的な推定値として考えることが重要です。